多分このサマータイムケイレンツアーでは二日目が最も密度の濃い日であったであろう。
その3である。富山県魚津市片貝谷より若狭小浜へむけて高速道路上のヒトとなった私は本日も熱い暑い大気の中を、途方もないエネルギーの無駄遣いをしつつ、ひた走るのであった。
金沢も加賀も武生もすっとばして高速道路は敦賀で降りた。
国道27号線をひたひたと行けば、小浜に到着するのである。
しかして、敦賀で降りて間もなく、三方湖というのが進行方向右手に現れた。
こういう海ッぺりの湖はきっと汽水湖にちがいない。霞ヶ浦に似ているな。では少しだけ寄り道をしてみよう。と思ったのである。
三方湖である。湖の岸に近いところは一面びっしりとヒシが覆っていたのであった。水面近くにはイトトンボがたくさん飛んでいた。
湖岸はコンクリで固めてあった。そのコンクリ沿いに水が流れているのがわかった。なにか不思議な感じがしたものである。
国道27号線は、大変大変暑かった。海からの涼風が山に阻まれて届かないからであろう。
へとへとになりつつ、午後4時前に小浜駅に到着。観光案内所へ。
観光案内所では、おばちゃんが一人奮戦していた。奮戦していたがなにやらもう疲れ果てた様子で厭戦気味丸出しであった。私の前に案件が(人数が)3件ほどあり、旅館への道順とかレンタサイクルの返却とか、小浜の見所などを聞いていた。見所を聞いていたおじさんは、明らかに私より後からやってきたのだが私より先に受け付けられたりしていた。なにか差別されたみたいで気になった。がしかしここは小浜である。関西である。汗だくになっている輩は一段低く見られるのかも知れぬ。きっとそういうルールみたいなものがあるに違いあるまい、箱根の向こうからやってきた田舎もんは黙っているに限る、としてされるがままになっていたら、ようやく「にいさんお待たせしましたな」と声が掛かった。
「お忙しいようで何よりですね。今晩の宿とおみや…」
そこまで言ったらおばちゃんにかように遮られたのである。
「今日、小浜には泊まるところはありません。民宿からペンションまで一切合財全部満室です!朝からひっきりなしにお客さんが来て聞きます。でももう本当に宿はないんです」
かようなコトバを投げつけられて、さっきから邪険にされていたという不満が少し感情を揺さぶった。
「えーほんとー!?せっかく茨城から来たのに。俺はもうへとへとなんだ。ビジネスホテルも空いてないのかい!?」
「茨城から遠路はるばる来てくれてありがたいけれどもさっきも言ったけどホントにどこも空いてませんのです。もうココも閉めたいくらいですわ」
私は少しキレたようである。
「もういい。帰る。お土産に小鯛(こたい)ささ漬けというのが有名ですね。そのお店を教えてくれれば…」
「こだいね。こだいささづけいいます。それならマル海さんがいいでっしゃろ。この道をまっすぐいってシェルのスタンドのとなりですわすぐわかります」
成る程、「こたい」ではなく「こだい」と読むのか。と解ったところで少し腹立ち気味であったが、おばちゃんが教えてくれたマル海さん正しくは小浜海産物株式会社小浜本社はすぐに見つかった。
マル海さんでは、さっきのおばちゃんとは違って、汗まみれのバイク乗りも差別せず、女性従業員が大変やさしく丁寧な応対をしてくれて感激であった。腹立たしさは一気に解消されたのである。小鯛ささ漬け「匠」というのを購入し、関係各所へクール便で発送の手続きをとった。今回のツアーの第一目的はこれにてコンプリートしたわけである。うそつきにならんで良かったのう。関係各所のみなさまよ。ホントにおいしんだから。楽しみにしててね、なのである。
すっかり気分の良くなった私は、しかし宿無しの私は、あてもなく小浜の町を後にしたのであった。国道27号線は灼熱の世界だったので、もう通りたくなかった。無謀にも関西の地図を持っていなかったので、適当に走ることにした。道路が込んでいないほうへと舵をとっていった。国道の行き先案内の看板には京都64kmと読めた。きっと琵琶湖のほとりに出るのだろうな。と思った。琵琶湖の湖畔で一泊というのはステキだ。そうしよう。などと考えていたのだが。
行けども行けども琵琶湖は現れない。そしてえらい山の中である。山の中の曲がりくねった道を行く。幾つ目かの峠を越えて下り坂になったら、なんと渋滞である。渋滞にもまれもまれて、ようやく流れたと思ったら、そこは京都であった。
琵琶湖の湖畔で一泊というのは企画倒れになってしまった。地図を持っていないのがいけないのである。コンビニで関西の道路地図を買うと同時に京都駅への道順を尋ねる。若い店員はどうにも要領を得ない。買ったそばから地図を広げて、「ではこの店はこの地図でいうとどこか」と問う。しかしなんとその若い店員は地図を読めないのであった。
なんとか京都駅についた。疲労困憊である。特に重たいクラッチ操作をする左手が言うことを聞かない。しかし京都駅というのは今日との碁盤の目の中心付近にあると思い込んでいた。しかして、下のほうでったな。駅周辺のビジネスホテルを探す。このときはじめてi-modeを検索した。値段の安いのは駅周辺から少し離れていた。値段が高いのは目の前に立っていた。あまりに疲れていたので、2千円の差額を支払うことにした。
2千円の差額を支払って八千円のビジネスホテルである。そんな。高すぎやしないか。駅から近いからかな。魚津のスカイホテルはフロントの応対が素晴らしくて感銘したが、京都のアバホテルのフロントは駄目である。また。客室に経営者が自画自賛している本が置いてあって、「ビジネスマンには無料で進呈」なんて書いてある。あざとい。自画自賛してるようでは駄目であろう。
京都駅の地下街のハンバーグの店でパスタを食った。パスタを食う前に生ビールを飲んだが、昨日のヱビスといい、今日の生中といい、感動的に旨かった。
また、店の従業員の笑顔と仕事に対する真摯な姿勢にこれまた感銘を受けた。
アバホテルのフロントはいただけないが、併設しているコーヒーやの従業員の対応がやさしくて、涙がでそうになった。
やっぱ京都は違うな。と思う宵の口、午後9時半なのであった。
左手は、昨日より痙攣の振幅が広くなったようである。なんでこうなるのであろうか。左手への負荷が大きいというだけの理由であろうか。はたまた塩分とかカリウムが汗と一緒に出てしまって不足なのであろうか。それとも腰から来ているとか…。
明日は琵琶湖に寄りたいな。そして一気に帰ることにしようか。しかし遠いから無理かな。
まあ、休みはあと二日あるしな。なにあと二日しかないのか。一日早く帰って疲れを取らんといかぬ。や、しかし一日で帰れるのであろうか体力的に。………などと考えているうちに寝入ってしまった。その3日目にようやくつづく--kata
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