2004年の春に、地元のハードオフで救出したこれがウチのぎぶそん君である。レスポールカスタムという種類である。こたび3年越しで(要するに3年放置していたのであるが)シロウト修理を致すに至ったのである。きちんとしたリペアに出そう出そうと思いつつも面倒なので3年経ってしまったのである。ホントかどうかは知らないがシリアル番号をしらべると、72年製らしい。
しかし今回、修理屋さんに出さずになぜ自分でやっつけることになったのか。それは、春の訪れと同時にやってくる強烈な物欲を抑制するためなのであった。実 際ワタクシは某ハードオフという会社の「いいカモ」なのであるが、先日ふらりと訪れたハードオフ守谷店に飾ってあったリッケンバッカー12弦をあやうく買 うところであった。そのときのワタクシの内なる葛藤はいつもながらに激しいものであったが、その物欲に勝てたのはウチに放置してあるぎぶそん君の存在を思い出すことができたからであった。
3年前、某ハードオフつくば店で救出した当時は本当に酷い姿であった。全身にタバコのヤニを2ミリ厚で積層し、ブリッジは殆ど崩れ去りつつあった。ヤニのコーティングがあまりにひどいので救出時には気が付かなかったけれど、ナットの付近の指板からネックにかけて割れがあったのである。このような状態なのに、ホントにアタマに来るんだけれどgibson製だからといってジャンク品なのに2万円もしたのである。国産でこのような状態なら、そもそも店には並ばないハズである。店頭でパッとみて、酷い状態だけどブリッジを取り替えれば使えるじゃん、と短絡し、なけなしのお金を払って引き取ってきたのである。
引き取ってきて、まずは全身にコーティングされたタバコのヤニを落とすことから始めたのである。このあたり、書いていてわかりにくいなと思うが、これは3年前の作業である。2ミリ積層のヤニは、レモンオイルなどといった生ぬるい方法では太刀打ちができないのであった。なので次にOA機器のクリーナーを使ったが、ぜんぜんきれいにならないので、ついには中性洗剤で洗ってようやくヤニのべとつきを取り去ることが出来たのである。実は当時から怖いもんなしだったのである。
しかしタバコのヤニというのは溜まると本当にやっかいであることよ。こんなのがオノレの体内に蓄積していたかと思うとぞっとする。タバコを止めてもう数年になるが、やめて本当に良かったと思うのである。
ずっと前に壊してしまったオービルLPspl.のブリッジをかっぱいで装着し、弦をはってアンプにつないだら音がしっかり出たのである。ヤニ落としがエラく大変だったので、達成感があり、感動的でもあった。いい気になって「おう。フロントピックアップのなんとまろやかなことよ。ジャズィであることよ」などと喜んでおった。ネックの割れは弦の張力と反対の方向だったので、このまま使えるかなと思ったのだが、トラスロッドが効かないし、ヘッドがあらぬ方向に曲がっているのを発見した。これはちゃんと使うには修理が必要であると判断し、楽器屋さんに持っていこうと思って外装パーツをまた全部はずして置いておいた。置いておいていつのまにか3年が経ってしまったのである。これを放置という。
前述の経緯があって、3年越しで修理をオノレの手ですることしたのであるが、修復の方法を探るべく、まずはネックの割れ(ヒビ)がどのような状態になっているかを良く観察したのである。
つぶさな観察の結果、割れを引っ付ける方策を考えだした。荒療治であるがネックに力をかけて、割れの部分を広げて、そこへ木工用ボンドを流し込み、クランプをかけるという方法である。力を掛けすぎると、ネックをブチ折ってしまう可能性がある。また割れ目にボンドを流し込むのに注射器が必要である。ジョイ本に行ってボンドと注射器を買ってきた。クランプはウチにあるだろう、と思って買ってこなかった。
作業は困難を極めた。そもそも注射器というのはさらさらの液体を注入することを想定しているのであって、木工用ボンドのように粘りのある液体を使うにはきわめて不適であった。要するにピストンを押すのに、物凄い力が要るのであった。物凄い力でピストンを押しているのに、針の先から出てくる量は本当に極わずかなのである。気合を入れて注入していたら「ポン」と音がして先端の針が外れて、外れたところから勢い良くボンドが噴出してそこいらを木工ボンドまみれにしてしまったのである。トホホのホ。
適当なクランプはウチにあるだろうとおもって買ってこなかったのだが、あったのは写真のような長いものであった。クランプをかけるのに、手間取って、時間がかかって、ボンドは半ば乾いてしまったかもしれない。
がしかし、見事張り付いたようである。力を加えてもはがれることは無い。
なにより、トラスロッドがちゃんと効いて感動した。嬉しくて回しすぎたのは失敗であった。
で、外装パーツをつけて、弦をはってこんな風である。ボリュームノブを3年のうちにどこかにやってしまった。えらく渋いのがついていたのに。
激シブなのがネックの裏。塗装が激しく剥げていて、マホガニーの木の地肌が露出している。この手触りもとても良いのである。スタンダードとカスタムの違いはあるけれど、黒いレスポールなのでニールヤング大先生の「ライク・ア・ハリケーン」の出だしのところを延々と繰り返すのであった。めでたしめでたし。
それにつけても、バンドやりたいな。誰か一緒に遊んでくれないかな、と思う午前11時なのである。--kata
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